アメリカ駐在の銀行口座、着任1週間で作った実手順
先に結論:着任直後の口座は「どの銀行が一番いいか」で悩むより、会社指定か職場・自宅の近くにブランチがある銀行を1つ、まず開けることが正解。Chase・BofAはSSNなし(パスポート+ビザ)でも窓口なら開けるが、利子のつくSavingsはSSN/ITINが要る。そしてここが一番大事:デビットカードをいくら使ってもクレジットヒストリーは1ミリも積まれない。口座を開けたら、その足でクレヒス構築を並走させること。僕は着任1週間でSSN→口座→デビットまで通したけど、「銀行選び」で2年間の高金利を取り逃した反省もある。以下、足場(比較表)と僕の実手順の両方を書く。
着任してホテル暮らしのまま、SSN・銀行口座・運転免許を順番に回る——駐在1年目の全員が通る道です。中でも銀行口座は「クレカも家賃も給与受け取りも全部これが起点」なのに、会社は「近くの銀行で作って」くらいしか教えてくれない。僕もそうでした。
この記事では、①Chase・BofA・地方Credit Unionを手数料・最低残高・機能で比較した表(誰でも使える足場)と、②僕が実際に着任1週間で口座を開けた手順・つまずき・その後の失敗を重ねて書きます。同僚に「まずこうしとけ」と話す感覚で。
アメリカの銀行口座、Chase・BofA・Credit Unionはどう違う?
大手2行(Chase / Bank of America)と地方Credit Union(信用組合)は、性格がけっこう違います。
| 項目 | Chase | Bank of America | 地方Credit Union |
|---|---|---|---|
| 月額手数料(Checking) | $15(Total Checking) | $12(Advantage Plus) | $0〜$5が多い |
| 手数料の免除条件 | 直接入金 月$500以上/残高$1,500以上 等 | 直接入金 月$250以上/残高$1,500以上 等 | そもそも無料の口座が多い |
| ATM網 | 全米で自社ATM多数(Chase ATM $0) | 全米に自社ATM多数 | CO-OP Shared Branch参加で全米広範囲(要確認) |
| Savingsの金利 | 低め | 低め | 全米平均より高めの傾向(要確認) |
| アプリ・オンライン | 強い(英語のみ) | 強い(英語のみ) | 大手CUは充実、小規模はまちまち |
| 加入のしやすさ | 誰でも(窓口) | 誰でも(窓口) | 加入資格の確認が先(勤務先・地域・団体) |
| 駐在員の使い勝手 | 支店・ATMが多く安心 | 同上 | 手数料と金利は有利だが最初の一歩に手間 |
数字はChase・BofAの公式手数料ページ(Chase Total Checking/BofA 口座手数料一覧)ベースです。
大手2行の月額$12〜$15は「条件を満たせば無料」になります。駐在員なら普通は給与の直接入金(direct deposit)で免除条件を満たせます。BofAは直接入金$250以上、Chaseは$500以上。放置して残高も入金もないと毎月$12〜15、年で$144〜180が地味に溶けます。
Credit Unionは手数料・金利で有利ですが、「入れるかどうか」の確認が先。勤務先・居住地域・加盟団体などの加入資格があり、着任直後に「自分が入れるCU」を探す一手間が要ります。Navy Federalなど軍・連邦職員系は駐在員が入れないことも多いです(要確認)。
結局どれを選ぶ?——判断軸
「どの銀行がベストか」に唯一解はありません。状況で決めます。
| あなたの状況 | 向いている選択 |
|---|---|
| 会社に指定・紹介の銀行がある | 迷わずそこ。開設サポートが効き、給与入金もスムーズ |
| 指定がなく、とにかく早く1つ欲しい | 職場・自宅の近くにブランチとATMがある大手(Chase / BofA) |
| 手数料を1円も払いたくない/金利を取りたい | 加入資格のある地方Credit Union(探す手間を許容できるなら) |
| 出張・引っ越しが多くATM網が命 | 全米に支店が多い大手 or CO-OP網のあるCU |
僕の実感では、着任直後の1個目は「安さ」より「早く確実に開けること」で選ぶのが正解。金利の最適化は後からいくらでもできます(この順番を間違えた話は後述)。
SSNなしでも口座は作れる?——必要書類と手順
「SSNがまだ来てない」——着任直後の最大の不安がこれ。SSNなし(パスポート+米国ビザ)でも、ブランチ(実店舗)に本人が出向けばChecking口座は開けることが多いです。ただし条件があります。
- オンライン申込みは基本アウト。申込フォームにSSN必須フィールドがあり、パスポート番号では弾かれるケースが多い。窓口に本人が行くのが原則。
- 利子のつくSavingsはSSN or ITINが必要。利息は米国税法上の課税対象なので、番号がないと開けないことが多い。まずはChecking+デビットから。
- Chase・BofA・Citibank・PNCはITIN受け入れを公表しています(Chase 非居住者向けガイド/Bankrate: 非米国市民の口座開設)。
窓口に持っていく書類チェックリスト
銀行・支店で細部は違いますが、着任直後はこのあたりを一式そろえて行けば大きく外しません(最終的な必要書類は開設先の公式・支店に要確認)。
- パスポート(写真付き本人確認)
- 米国ビザ(E/L/H など)
- SSN(取得済みならベスト。未取得ならパスポート+ビザで窓口交渉)
- 住所証明(60日以内を求められがち):賃貸契約書(lease)/公共料金明細/給与明細 のいずれか
- 初回入金の現金 or チェック(数十ドルでOKな銀行が多い)
- 着任直後で住所証明が揃わない場合:会社の住所確認レター(Employment Verification Letter)(通用するかは銀行ごとに異なる・要確認)
住所証明が最初の壁になりがちです。ホテル暮らしで公共料金の明細なんて無いので、賃貸契約前だと会社レターで交渉、というパターンが出てきます。
窓口でつまずきやすいポイント
飛び込みより予約(appointment)が確実です。担当者不在で「SSNが来てから来て」と門前払い——という話をよく聞きます。
SSNなしで開けた場合、後日SSNを取ったら口座への紐付け申請が要ります。放置するとW-9の提出を求められることも。
あとは窓口ガチャがある。これは運転免許でも実感したんですが、アメリカは本当に自己責任の国で、窓口の担当者が適当なこともある。言われたことを鵜呑みにせず、一個一個「これで合ってる?」と自分で確認しながら進めるのが鉄則です。
なお「SSNを先に取ると口座開設は一気に楽になる」というのが僕の体感です。SSN取得の実手順は別記事にまとめています → アメリカ駐在のSSN取得手順。
僕はこうした——着任1週間の実手順
ここからは僕の実際のケース。参考にする分にはいいけど、「これが標準」ではなく「一例」として読んでください。
- 着任 → 約1週間でSSN取得(会社の通訳サポートありでスムーズ)
- SSN取得後に銀行口座を開設。銀行は会社指定の地方銀行(Credit Unionではない中堅の商業銀行)。最初の入金は約$10、月額手数料なし。書類はSSN・運転免許など一般的なもの。
- 同じ銀行でデビットカードを作成(クレカが出るまでのつなぎ)
- 口座開設の約1ヶ月後に、最初のクレジットカード(日系のANA USAカード)を申請
正直、二度手間や大きな失敗はありませんでした。SSNを先に取ってから口座に行ったので窓口で詰まらなかった。会社指定の銀行だったので開設サポートも効いた。「どの銀行がベストか」で悩む時間をゼロにして、まず1個確実に開けた——今振り返っても正解でした。
でも「銀行選び」で2年間、高金利を取り逃した
きれいに開けた一方で、正直に書いておきたい失敗があります。
渡米時「どの銀行を作ればいいか全く分からず」、会社から紹介された銀行をそのまま使い続けました。で、2年目になって初めて「金利の高い銀行があるらしい」と気づいて調べ、口座を作り、給与の受け取り口座を切り替えた。最初の2年間、余剰資金を低金利の口座に寝かせて、高金利の機会を逃していたわけです。
いくら損したかは残高次第なので断定しません。ただ、当時の高金利savingsやSGOV(米短期債ETF)は年4〜5%が普通にあった時期で、まとまった生活防衛資金を0.01%の口座に置くのと4%台に置くのとでは、数十万円単位で差がつく話です(金利・税は要確認)。ここは別記事に詳しくまとめています → アメリカの高金利貯金 vs SGOV。
開設は最速・最確実な銀行で。金利の最適化は落ち着いてから別口座で——この順番でいい。1個目で完璧を狙わなくていい。
Checking と Savings、どう使い分ける?
口座を開けるとき「Checking? Savings? 両方?」と聞かれます。基本構造はシンプル。
| 口座 | 役割 | 利息 | SSN/ITIN | 駐在員の使い方 |
|---|---|---|---|---|
| Checking(当座) | 日常の入出金・デビット紐付け | ほぼなし | 無しでも開ける場合あり | 給与を受け取るメイン口座 |
| Savings(普通/貯蓄) | 貯蓄・緊急予備費 | あり | 必要 | 余剰をここに移す・生活防衛資金 |
「給与をCheckingで受け取り → 余った分をSavingsに移す」がド定番。CheckingからSavingsへの移動はACH(無料)でできます。かつてSavingsには月6回の引き出し制限(Regulation D)がありましたが、2020年の規制緩和後は銀行の裁量で運用が分かれます(Chase・BofAは公式で「制限なし」としているが要確認)。
海外送金(日本への仕送りや、日本から立ち上げ資金を送る)についても一言。銀行のワイヤーはChaseで海外ドル建て$40/回・窓口最大$50/回、BofAで$0〜$45と幅があり、さらに為替に中値から数%のマークアップが乗ることもあります(Bankrate: 送金手数料)。日本⇄米国の送金は銀行ワイヤーよりWiseなど専用サービスの方が安く済むことが多い。ここは手数料で万単位の差が出るので、別記事で比較しています → 海外送金の手数料比較。
一番の落とし穴:デビットではクレヒスは1ミリも積まれない
これが本記事で一番伝えたいこと。銀行口座を開けてデビットカードを毎日使っても、クレジットヒストリー(クレヒス)はゼロのままです。
デビットの利用は信用情報機関(クレジットビューロー)に報告されません。「自分の口座から引くだけ」で借りていないので、信用の記録が作られない。ここを知らずに「口座もカードもあるし大丈夫」と半年過ごすと、クレヒス空白がまるまる半年伸びる——アパート契約・自動車ローン・クレカ審査で効いてくるやつです。僕自身、着任直後にクレヒスがなくて困ったのは「米国のクレカが作れない」ことでした。
だから口座を開けたその足で、クレヒスを積む手段を並走させる。着任直後の現実的な選択肢はこれ。
| 手段 | SSN | 特徴 | こんな人に |
|---|---|---|---|
| セキュアードカード | 必要なことが多い | 保証金$200〜$500を預けて発行。支払い履歴が3大ビューローに報告される | 王道。まず1枚 |
| 日系カード(ANA USAカード等) | 無くても作れる定番 | 日本の与信ベースで発行。クレヒスの土台づくりに | 日本から関係を持てる人 |
| 移民・留学生向けカード(Zolve/Tomo等) | 不要 | パスポート+ビザで審査 | SSN待ちの人 |
| 家族・同僚のAuthorized User | 不要 | 既存カードに追加してもらい履歴を共有 | 頼める相手がいる人 |
| ITIN取得後の申請(Discover/Capital One等) | ITIN | SSNなしでも申請可を公表 | ITIN取得済みの人 |
(SSNなしでのクレカ申請はExperian公式の解説が分かりやすいです)
僕の場合は、SSN取得後すぐデビットを作って生活のつなぎにしつつ、口座開設の約1ヶ月後に日系のANA USAカードで土台を作り、そこからクレヒスを育てました。デビットはあくまで「クレヒス0期間の生活手段」で、スコアを積むのは別——と割り切っていた。「つなぎのデビット → 土台カード → 本命カード」の順番と実数字は、クレヒス構築の記事に詳しくまとめています → 駐在のクレジットカード戦略・クレヒス0からの作り方。
まとめ:完璧な1個目より、動く1個目を
銀行口座は「一生の選択」じゃありません。最速で確実に開けられる1個目を作って、生活を回し始めることが最優先。金利も、サブ口座も、送金の最適化も、全部あとから足せます。2年間高金利を逃した僕が言うんだから、間違いない。
そして、口座を開けた達成感で満足しないこと。デビットを握った瞬間から、クレヒスの時計はまだ動いていない。そこだけ、着任初日に思い出してください。
よくある質問
Q. SSNがまだ来ていません。銀行口座は作れますか?
はい、多くの場合は作れます。Chase・BofAなど大手は、パスポート+米国ビザを持ってブランチ(窓口)に本人が行けばChecking口座を開けることが多いです。ただしオンライン申込みはSSN必須で弾かれがちで、利子のつくSavingsはSSN/ITINが要ります。SSNを先に取ると開設が一気に楽になるので、取れるなら先に取るのがおすすめです。
Q. 手数料の安い地方Credit Unionと大手銀行、どちらがいいですか?
金利と手数料だけならCredit Unionが有利ですが、加入資格の確認と口座開設に手間がかかるため、着任直後の1個目には大手(支店・ATMが多く、会社指定にもなりやすい)が現実的です。生活が落ち着いてから、加入資格のあるCUや高金利口座を2個目として足すのがバランスの良い進め方だと思います。
Q. デビットカードを使っていればクレジットヒストリーは貯まりますか?
貯まりません。デビットの利用は信用情報機関に報告されないため、口座とデビットがあってもクレヒスはゼロのままです。クレヒスを積むには、セキュアードカード・日系カード・移民向けカードなど、信用機関に支払い履歴が報告されるクレジットカードを口座開設と並走で用意する必要があります。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。
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『駐在のお金、全部やってみた』
このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。