米国の高金利貯金 vs SGOV
「銀行に預けても利息なんて雀の涙でしょ」——駐在に来て最初の数ヶ月、僕はそう思い込んで、生活資金をただ普通の銀行口座に放り込んだまま放置していた。日本にいた頃の感覚を、そのまま持ち込んでいたのだ。
でも、これが結構もったいなかった。アメリカの銀行金利は、日本とは桁が違う。文字通り、桁が。後から知って「もっと早く動けばよかった」と思った話を、今日は同僚に話すつもりで書いていく。
日本のメガバンクとアメリカのHYSA、利率が数十倍違う
日本のメガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)の普通預金金利は、だいたい年0.1〜0.2%前後(時期と銀行で変わる)。100万円預けても1年で数千円、税引き後だともっと少ない。
一方、アメリカには HYSA(High Yield Savings Account/高金利普通預金) というものがある。執筆時点で僕が見ている数字はこんな感じだ。
- SoFi Bank — 最大3.80% APY(ただし後述する条件付き)
- Synchrony Bank — 3.40% APY
- American Express Personal Savings — 3.10% APY
日本のメガバンク普通預金と比べると、ざっくり数十倍レベルの差になる。しかもこれらは FDIC保険(1口座あたり$250,000まで保護)の対象だ。いわゆる怪しい高利回り商品とは性質がまったく違う。普通の貯金口座で、これだけ利率がつく。
ひとつ正直に書いておくと、APYは頻繁に変わる。FRBの政策金利に連動するので、上の数字も来月には違っているかもしれない。だから僕は、具体的な銀行名を鵜呑みにするより自分で調べることをすすめたい。「Best APY Bank」「best high yield savings 2026」あたりで検索すると、NerdWalletやBankrateが定期的に更新しているランキングが出てくるので、最新の状況がすぐ分かる。
「最大3.80%」の裏にある条件は、ちゃんと見ておく
ここは煽らずに書きたいところだ。「最大3.80%」みたいな数字には、たいてい条件がついている。
よくあるのが 直接入金(Direct Deposit)の設定だ。給与振込をその口座に紐づけると、ブースト金利が適用される。ほかにも最低残高の維持や、月次手数料の回避条件がついていることもある。
なので、広告の一番大きい数字だけを見て口座を開くと「あれ、思ったより利率が低い」となりかねない。条件を満たせるかどうかは、開設前に必ず確認したほうがいい。僕も最初、条件を読まずに飛びついて「あ、ブースト効いてないわ」と気づいたクチだ。
僕の実例:SoFiの利息が、毎月「外食1回分」
僕自身は SoFiのSavings口座を、生活資金の置き場所として使っている。家賃や食費、当面使うお金をここにまとめておくイメージだ。
何が嬉しいかというと、毎月入ってくる利息が ほぼ外食1回分になること。生活費を置いているだけの口座から、月に一度ちょっといいディナー代が湧いてくる感覚は、地味だけど効いてくる。日本の口座に寝かせていたら、絶対に得られなかったお金だ。
ただ、HYSAには弱点もある。「まとまった資金を置くなら、もっと条件のいい選択肢がある」という点だ。
まとまった資金は、僕はSGOVに置いている
ここからが本題かもしれない。僕がまとまった現金を置いているのは、銀行ではなく SGOV というETFだ。
SGOVはBlackRock(iShares)が運用する、0〜3ヶ月の米国短期国債(T-Bills)に投資するETF。ざっくり特徴を並べるとこうなる。
- **経費率0.07%**と業界最低水準クラス
- 残存期間が極端に短いので、元本変動リスクがとても低い
- 分配金は毎月支払われる
- 利回りは政策金利に連動しやすく、ここ数年は4〜5%前後で推移してきた(執筆時点の話で、FRBの利下げ局面では下がっていく)
- T-Billの利子は連邦税は課税・州税は非課税という税制上の利点がある
HYSAと違ってFDIC保険はないが、裏付けは米国政府の短期国債だ。そして大事なのは、SGOVは条件付きブーストに頼らず、フラットに高い利回りを取りやすいこと。だから 数万ドル規模のまとまった資金になると、HYSAよりSGOVのほうが有利になるケースが多い——というのが僕の実感だ。
注意点もある。HYSAはほぼ即日引き出せるが、SGOVはETFなので「売却→決済→銀行振込」で数日かかることがある。証券口座(Fidelity・Schwab・Vanguardなど)の開設とETF購入の手間も必要だ。駐在員の場合は W-8BENの提出や日米租税条約の扱いも関わってくるので、ここは要確認のポイントになる。SGOVを現金枠に使っている実例は実ポートフォリオ公開に載せている。
結局、僕の答えは「使い分け」
長くなったが、僕がたどり着いた結論はシンプルだ。
- すぐ使う生活費 → 高金利バンク(HYSA):流動性が高く、利息も外食1回分つく
- 当面動かさないまとまった資金 → SGOV:利回りが高く、手間をかける価値がある
自分の金額と利回りを入れて、HYSAとSGOVの年間リターンがどれだけ違うかを試せるツールも作った → SGOV vs 高金利貯金 比較ツール。
そしてもうひとつ、駐在員ならではの安心材料がある。帰任時の円転には必ず為替リスクがついて回るけれど、米国の年3〜5%という金利があれば、多少の円高なら利息分でいくらか取り返せる可能性がある。100万円相当を1年置いて4%なら、ざっくり4万円分のバッファーになる計算だ。為替を完全にコントロールはできないが、利率という味方がいるのは精神的に大きい。
最後に。ここに書いたのはあくまで「僕の場合はこうだった」という話で、投資や税務のアドバイスではない。金利もSGOVの利回りも執筆時点の数字で、これからFRBの利下げで変わっていく可能性が高い。口座の条件、帰任後の税務処理(米国ではForm 1099-INTで報告。日本帰任後の扱いは専門家に確認を)など、最終的な判断は ファイナンシャルアドバイザーや税理士に相談してほしい。そのうえで現金の置き場所を一度見直してみると、思っていたより働いてくれるかもしれない。
よくある質問
Q. 余剰資金は貯金とSGOVどっちがいい?
生活費は高金利バンク、まとまった資金はSGOV(米短期国債ETF)が働きやすい、というのが僕の使い分けです。
Q. SGOVのデメリットは?
ETFなので「売却→決済→振込」に数日かかります。即時に使う生活費の置き場には向きません。
Q. 駐在員が気をつける点は?
W-8BENの提出や日米租税条約の扱いが関わってきます。税務まわりは要確認です。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。