赴任前 入門 2026.07.10

出国前に証券口座をどう整理する? SBI・楽天・松井の対応と、僕が渡米前にやった手順

読了 約10分 ✓ 内容確認 2026.07.10 全9章
筆者:Jin|アメリカ駐在4年目・米国工場長

日本の製造業から渡米し、赤字工場を黒字化。実資産を 2,000万→6,400万円 にした過程を、失敗も実数字も公開しています。FPでも税理士でもない「自分で全部やった人」の記録です。著者の経歴 →

結論を先に。 海外赴任で非居住者になると、日本の証券口座は「無届けで放置」できません。CRS(共通報告基準)で海外在住は税務当局に自動で伝わり、証券会社の判断で強制売却・口座解約もあり得ます(強制売却なら含み益に20.315%課税)。ただし正しく届け出れば口座は維持できます。新規買付は全社禁止・売却のみ可。SBIは2025年の改定で外国株・投信の保有継続まで可能になり、いま一番手厚い。楽天・松井は届出期限や特定口座の扱いに差があります。出国前にやることは「①各社に届出 → ②NISAは前日までに継続適用届出書 → ③売る株は出国前に売る」の3つです。

赴任の準備で、僕がいちばん焦ったのがこれでした。会社は住居や車の手配は手伝ってくれても、「自分の資産をどう動かすか」は絶対に教えてくれません。完全に手探りです。証券口座は「バレなければそのまま放っておけばいい」と思っている人が多いけれど、それは今どき通用しません。この記事では、SBI・楽天・松井の3社が非居住者にどう対応するかを表で横断比較して、最後に僕が実際にやった手順と判断を残します。出国前チェックリストとして使ってください。

なお、税金の細かい話は僕はFPでも税理士でもないので、「僕の場合はこうだった」と「公式にはこう書いてある」の2階建てで、断定は避けて書きます。

まず用語:非居住者・常任代理人・継続適用届出書とは

3社の話に入る前に、出てくる言葉を定義しておきます。ここを押さえると各社の違いが読めます。

用語意味
非居住者税務上、日本に住所がない人。一般に1年以上の海外赴任が見込まれると、出国日から非居住者扱いになる(会社命令の駐在は多くがこれに該当)
常任代理人非居住者に代わって日本で手続きをする人。多くの証券会社が2親等以内の親族か、弁護士・税理士等の専門家を要求する
継続適用届出書NISA口座を非居住者になっても維持するために、金融機関へ出す届出。出国日の前日までに提出が必須(事後不可)
CRS(共通報告基準)世界100か国以上で金融口座情報を税務当局が自動交換する仕組み。海外在住が金融機関に筒抜けになる前提の制度

「無届けで放置」はなぜダメか——最悪、強制売却で課税される

まず一番の誤解から潰します。「非居住者になっても黙っていればバレない」は、もう成り立ちません。

理由がCRS(共通報告基準)です。国税庁の説明のとおり、海外の金融口座情報は各国の税務当局間で自動交換されます。あなたが海外の銀行で口座を開けば、その情報は日本にも流れる。「日本の証券口座に海外から静かにアクセスし続ける」のは、制度の網の中にいるということです。

無届けのまま発覚した場合、証券会社は規約に基づいて保有資産を任意売却したり、口座を解約したりできます。強制売却されると、自分のタイミングを選べないまま含み益に20.315%の譲渡益税がかかる可能性がある。塩漬けにして待ちたい銘柄も、意思とは関係なく現金化されてしまう。

損しないための隠しではなく、損する隠しなんですよね。

きちんと届け出れば口座は維持できる。次の各社比較がその中身です。

SBI・楽天・松井の非居住者対応を比較

まず表で全体像を。制度の数字(届出期限など)はすべて各社の公式ページが出典です。

項目SBI証券楽天証券松井証券
届出期限出国後翌々日まで出国前日まで出国後90日以内
外国株の保有継続(2025/5/31〜)△(保有のみ・買付売却ともに不可)✕(原則売却)
投資信託の保有継続(2025/5/31〜)△(売却のみ)要確認
特定口座一般口座へ移管一般口座へ自動変更閉鎖必須
NISA継続○(継続適用届出書)○(対象者限定)○(5年間)
常任代理人要(2親等以内等)要(2親等以内等)公式に明記なし・要確認
未届けのリスク任意売却・解約特定/NISAの一般化任意売却・解約

出典:SBI証券「海外出国時(非居住者)の手続き」楽天証券「海外出国のお手続き」松井証券FAQ「海外転勤が決まりました」(いずれも2026年7月時点。制度は改定されるので申込前に各社最新版を必ず確認してください)。

共通する大前提は「出国後の新規買付はどの会社も全面禁止・売却のみ可能」。だから3社の違いは「①どこまで持ち続けられるか」「②いつまでに手続きするか」「③特定口座がどうなるか」の3点に集約されます。以下、要点だけ。

SBI証券:2025年改定でいちばん手厚くなった

以前は国内株など一部しか継続保有できませんでしたが、SBIホールディングスの2025年6月2日リリースのとおり、2025年5月31日から外国株式・投資信託(課税預り)・国内債券・STまで保有継続が可能になりました。NISAも2025年1月以降、継続適用届出書を出せば非課税保有を続けられる。手続きはカスタマーセンターへの電話と郵送書類の両方が必要で、常任代理人(2親等以内など)を立てます。「なるべく売らずに持ったまま出たい」人には、いま一番向いています。

楽天証券:外国株は保有継続できるが買付も売却も不可

楽天は1年以上の出国(米国なら183日以上の滞在)で手続き必須。注意点は、書類請求から届出完了まで2〜3週間、売却もできない空白期間が生じ得ること。ログイン・残高確認・円貨出金・国内株の売却は出国後もできますが、外国株・外国債券は買付も売却もできません。信用・FX・楽ラップ等は出国前に決済が必要です。NISA継続は「転勤者・帯同配偶者・公務での出国者」に限られ、期間は出国日から5年後の年末まで。

松井証券:特定口座は閉鎖・NISAの米国株は原則売却

松井は「特定取引を行う者の任意届出書 兼 異動届出書」+居住地国の住所確認書類を、出国後90日以内に提出。未提出だと任意売却・口座解約のリスクがあります。非居住者は特定口座を継続利用できず閉鎖。NISAは継続適用届出書で5年間維持できますが、米国株を持っている場合は出国前に売却・移管が原則で、未対応なら「当社が任意売却する」と明記されています。信用建玉は非居住者になった時点で強制決済対象。

NISA(新NISA)の非居住者特例——共通ルール

会社の転任命令など「やむを得ない事由」による出国なら、租税特別措置法の特例でNISAを維持できます。ポイントは3つ。

  • 手続きは出国日の前日までに「継続適用届出書」を提出。事後申請は不可。
  • 継続期間は届出日から5年を経過する日の属する年の12月31日まで(例:2026年6月出国なら2031年12月31日まで)。
  • その間、継続保有・非課税運用はできるが追加投資(買付・積立)は一切不可。5年を超えて帰国しないと自動廃止で課税口座へ移管。

一身上の都合での移住やジュニアNISAは継続不可です。制度の根拠は金融庁のNISA案内も参照してください。

iDeCoはどうなる(簡単に)

iDeCoは、海外赴任でも厚生年金に加入し続ける人(日本企業の駐在員は多くがこれ)は拠出を継続できます。国民年金を脱退する人は「運用指図者」になり、拠出停止・運用のみに。運用指図者でも口座管理手数料(月約66〜171円)は資産から引かれ続けます。ただ、非居住者は日本で所得税・住民税を払わないので所得控除のメリットは実質使えなくなる点は頭に入れておいてください。ここは勤務先の社会保険の状況で分かれるので、会社に確認するのが安全です。

僕が渡米前に実際にやった手順と判断

ここからが、表には出てこない実体験です。

僕の場合、赴任の準備期間(出国の数ヶ月前)にいちばん焦ったのが「NISAでメインに積み立てていた投資信託を売らなければいけない」と知った瞬間でした。理由は非居住者だと積立が止まるだけでなく、日本の投資信託を米国で持ち続けるとPFICという重い課税区分に引っかかるからです。この仕組みは複雑なので詳しくは別記事に譲ります(投信のPFIC問題を出国前にどうするか)。

やったことはシンプルで、出国前にNISAで積んでいた投資信託を売却して整理しました。当時は「せっかく積んだのに」と思ったけれど、今振り返れば強制的に利確できて結果的に良かった。売った資金はその後、米国株の運用に回しています。この「投信は強制的に止まる/2025年に一部変わった」話は別記事に詳しく書いています(海外赴任で投資信託はどうなる)。

子どもの教育資金で使っていたジュニアNISAも、渡米にあたって解約しました。非居住者は継続できないからです。今は教育資金を別枠にせず自分のポートフォリオにまとめて運用していて、帰国後に子ども名義の口座へ振り分けるつもりでいます。

金額の規模感は正直に言うと、当時の売却総額をきっちり記録していないので、ここでは「メインの積立を全部たたむ規模だった」とだけ書いておきます。数字を盛るのはこのブログの趣旨に反するので。

もう一つ、判断の軸として残しておきたい話。僕は今でも「投資信託は、また海外赴任の可能性を考えるとやりたくない」と思っています。証券会社を2つも3つも増やすのも管理が面倒。制度としてお得でも、出口(帰国・再赴任)から逆算して、非居住者になったとき詰む商品を最初から持たない——これが4年やって固まった僕の考えです。

出国前チェックリスト(保存版)

自分の状況に当てはめて、上から順に。

  • 自分が使っている証券会社の「非居住者手続き」ページを読む(届出期限・必要書類)
  • 常任代理人になれる親族(2親等以内など)がいるか確認。いなければ専門家紹介の要否を各社に問い合わせ
  • NISA継続適用届出書は出国日の前日まで。ここは一発勝負なので最優先
  • 出国後に持ち続けられない銘柄(外国株・特定口座の扱い)を確認し、売るものは出国前に売る
  • 投資信託を持っているなら、PFICの観点で出国前の整理を検討(→別記事
  • 信用建玉・FX・積立設定は出国前に停止・決済
  • iDeCoは拠出継続か運用指図者か、勤務先の社会保険状況で確認

まとめ

証券口座の整理でいちばん怖いのは、無届けで放置して自分のタイミングを他人(証券会社)に握られることでした。届け出れば持てる時代なのに、隠して強制売却されるのは本当にもったいない。会社が教えてくれない領域だからこそ、出国の数ヶ月前には一度、自分の口座を全部並べて棚卸ししてほしい。同じ焦りを繰り返してほしくない。

よくある質問

Q. 証券口座を非居住者のまま黙って使い続けたらどうなりますか?

CRSで海外在住は金融機関・税務当局に把握される前提です。発覚すると証券会社の判断で保有資産の強制売却や口座解約が行われ得ます。含み益があれば意図しないタイミングで20.315%課税される可能性もあるので、無届け放置は「バレない裏技」ではなくむしろ損をしやすい選択です。

Q. どの証券会社なら口座を維持しやすいですか?

2026年時点では、外国株・投資信託まで保有継続できるようになったSBI証券が最も手厚い印象です。楽天は外国株の保有は続けられるが買付も売却も不可、松井は特定口座が閉鎖され米国株は原則売却です。ただし制度は改定されるので、申込前に必ず各社の非居住者手続きページで最新の条件を確認してください。

Q. NISAは海外赴任中も続けられますか?

会社の転任命令などやむを得ない事由による出国なら、「継続適用届出書」を出国日の前日までに提出すれば、届出から5年経過する年の年末まで非課税保有を継続できます。ただし新規の買付・積立はできず、5年を超えて帰国しないと自動廃止です。事後申請は不可なので、出国前の手続きが必須です。

免責

この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。

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『駐在のお金、全部やってみた』

このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。