「海外赴任したら投資信託は強制売却」は、もう古い。2025年に変わった話(でも積立は止まる)
「投資信託、どうなるんですか」——出国の手続きで証券会社に聞いたとき、返ってきた答えははっきりしていた。投資信託は売ってください、個別株は持っていてもいいけど売却しかできません、と。当時の僕には、投信を塩漬けで持ち続けるという選択肢すら無かった。だから全部売った。
ところが最近になって、各社のルールがこの1〜2年で変わっていたことを知った。今は出国手続きをすれば、投資信託も「持ったまま」にできる。「海外赴任したら投信は強制売却」は、もう古い情報になっていた。
ただし——だからといって「積み立てを続けられる」わけではない。ここを誤解すると痛い。これから海外駐在の可能性が少しでもある人に向けて、①僕のときはどうだったか、②今はどう変わったか、③それでも投信の積み立ては慎重に考えた方がいい理由、を順に書く。僕は税の専門家ではないので、実体験と各社の公式情報ベースで書く。
僕のときは「投信は強制売却・個別株は塩漬け」だった
数年前、僕が渡米のために出国手続きをしたとき、主要なネット証券の扱いはどこもだいたい同じだった。
- 投資信託 → 出国前に売却(解約)が必要
- 国内の個別株・国債 → 保有は継続できるが、売却のみ(新規の買付は不可=塩漬け)
つまり、コツコツ積み立ててきた投信は、持っていく権利すら無かった。これは僕の記憶違いではなく、当時のネット証券では標準的な運用だったとあとから確認できた。
2024〜2025年で、ルールが変わった
ところがこの1〜2年で、各社が非居住者の保有可能商品を一気に拡大した。
- 楽天証券:出国手続きをすれば、投資信託も保有継続できる(売却のみ・新規買付は不可)(楽天証券 出国手続き)
- SBI証券:2025年5月末から、課税口座(特定/一般)の投資信託も継続保有の対象に拡大した(SBIグループ プレスリリース)
NISAについても、会社命令の海外転勤などに限り「継続適用届出書」を出せば最長5年は非課税で持ち続けられる(ただし新規買付は不可)(野村證券 FAQ)。
なので、今これから出国する人は、僕のときのように「投信は問答無用で売却」ではない。手続きをすれば、投信も持ったまま渡航できる。これは素直に前進だ。
でも「塩漬け」であることは変わっていない
ここが一番大事なところ。変わったのは「投信を売らずに持てるようになった」一点だけで、買付(=積み立て)ができないのは昔のまま。
- 出国中は新規買付不可。毎月の積立設定はすべて止まる
- 特定口座は一般口座へ振り替わる(帰国時に戻せる場合あり)
- 手続きをせずに出国すると、各社の判断で強制売却されることがある
- 会社によって対応が違う。たとえば三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム)は厳しめで、特定口座や累投型の投信は出国前売却が必要とされる(三菱UFJ eスマート証券 出国・帰国手続き)
- 出国時に有価証券などを1億円以上持っていると「出国税(国外転出時課税)」の対象になる
要するに「持っていける」けど「育てられない」。数年の駐在の間、積立は完全に止まったまま、というのが現実だ。
アメリカ行きは、もう一段重い(PFIC)
さらにアメリカ駐在の場合は、日本側の証券会社のルールとは別の問題が乗ってくる。米国の税制では、日本の投資信託は「PFIC」という扱いになり、持ち続けるだけで懲罰的に課税されうる。最悪、含み益の半分以上が税金で消える。
だから米国に行く人は、「日本の証券会社が保有を認めてくれる」かどうかに関係なく、税の理由で結局売った方が有利になることが多い。この話は別記事に詳しく書いた → 知らずに10年持っていた投信が、帰国後に税率50%超で課税される話(PFIC)。
じゃあ、これから積み立てる人はどうするか
僕が今、これから駐在の可能性がある人に伝えたいのはこれだ。海外の可能性が少しでもあるなら、投信の積み立てを「出国時にどうなるか」まで考えて始める。
- 投信に全振りしない:出国で積立が止まる前提で、ポートフォリオを組む
- NISAは制度を理解して使う:会社命令の転勤なら最長5年は継続できるが、買い増しはできない
- 渡米後を見据えるなら米国籍ETF・個別株という選択肢:VTI・VOO・IVVのような米国籍ETFはPFICに当たらない。非居住者でも使えるIBKRという口座もある
- 証券会社ごとの差を出国前に確認:同じ「投信保有継続」でも会社で条件が違う。手続きの締切(出国日前日まで等)も要注意
「海外なんてまだ分からない」という段階でも、知っておくだけで商品や口座の選び方が変わる。これは始める前にしか打てない手だ。
まとめ
「海外赴任で投信は強制売却」は、僕の時代は本当だった。でも2024〜2025年でルールが変わり、今は手続きをすれば持ったままにできる。ただし積み立ては止まるし、アメリカ行きならPFICで持ち続けるのも不利。だから結論は変わらない——海外の可能性があるなら、投信の積み立ては「出国時の扱い」込みで考えておいた方がいい。
僕は当時、選択肢すら無くて全部売った。今は選べる時代になった分、選び方を最初から知っておくのが、これから渡航する人の強みになる。
※各社の対応は変更されることがあり、公式FAQに更新日が明記されていない場合もあります。最新の条件は必ず各証券会社の公式ページで、税務は日米両対応の税理士・CPAで確認してください。これは一駐在員の体験と、執筆時点の公開情報に基づく整理です。
よくある質問
Q. 海外赴任したら、日本の投資信託は必ず売らないといけない?
昔は主要ネット証券で「投信は売却必須」が標準でしたが、2024〜2025年に各社が対応を拡大し、今は出国手続きをすれば保有継続できる場合が多いです(売却のみ・新規買付不可)。ただし会社により条件が違うので、出国前に各社の公式FAQで確認してください。
Q. 持ったままにできるなら、積み立ても続けられる?
いいえ。保有はできても新規買付(積み立て)はできません。出国中は積立設定が止まります。「持っていけるが育てられない」状態です。
Q. アメリカ駐在でも持ち続けていい?
日本の証券会社が保有を認めても、米国税制では日本の投信は「PFIC」として懲罰的に課税されうるため、税の面では出国前に売った方が有利なことが多いです。詳しくはPFICの記事を参照し、日米両対応の税理士・CPAに確認してください。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。