赴任前 入門 2026.06.28

僕のときは「投信は強制売却・個別株は塩漬け」だった

読了 約10分 ✓ 内容確認 2026.06.28 全8章
筆者:Jin|アメリカ駐在4年目・米国工場長

日本の製造業から渡米し、赤字工場を黒字化。実資産を 2,000万→6,400万円 にした過程を、失敗も実数字も公開しています。FPでも税理士でもない「自分で全部やった人」の記録です。著者の経歴 →

数年前、僕が渡米のために出国手続きをしたとき、主要なネット証券の扱いはどこもだいたい同じだった。

  • 投資信託 → 出国前に売却(解約)が必要
  • 国内の個別株・国債 → 保有は継続できるが、売却のみ(新規の買付は不可=塩漬け)

そのとき一番焦ったのは、NISAで毎月コツコツ積み立てていた投資信託を全部売らなければいけないと知ったときだ。「あんなに時間をかけて育てたのに」という気持ちと、「いくらで売ればいいのか、タイミングが分からない」という焦りが重なった。でも今振り返ると、その強制的な利確が、渡米後に米国株で組み直す原資になった——結果として悪くなかったと感じている。

これは僕の記憶違いではなく、当時のネット証券では標準的な運用だったとあとから確認できた。

2024〜2025年で、ルールが変わった

ところがこの1〜2年で、各社が非居住者の保有可能商品を一気に拡大した。

NISAについても、会社命令の海外転勤などに限り「継続適用届出書」を出せば最長5年は非課税で持ち続けられる(ただし新規買付は不可)(野村證券 FAQ)。

主要ネット証券の「非居住者になったときの扱い」早見表

証券会社投資信託の保有個別株の保有新規買付(積立)
楽天証券○ 手続きで継続可(売却のみ)○ 売却のみ✕ 停止
SBI証券○ 2025年5月末〜 課税口座の投信も継続可○ 売却のみ✕ 停止
三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム)△ 特定口座・累投型は出国前に売却が必要○ 売却のみ✕ 停止

※同じ「保有継続可」でも、対象口座(特定/一般/NISA)や手続きの締切(出国日前日まで等)は会社ごとに違う。NISAは会社命令の転勤に限り「継続適用届出書」で最長5年は非課税継続できるが買い増しは不可。表は執筆時点の各社公式情報に基づく整理なので、最新条件は必ず各社公式FAQで確認してほしい。

なので、今これから出国する人は、僕のときのように「投信は問答無用で売却」ではない。手続きをすれば、投信も持ったまま渡航できる。これは素直に前進だ。

でも「塩漬け」であることは変わっていない

ここが一番大事なところ。変わったのは「投信を売らずに持てるようになった」一点だけで、買付(=積み立て)ができないのは昔のまま

  • 出国中は新規買付不可。毎月の積立設定はすべて止まる
  • 特定口座は一般口座へ振り替わる(帰国時に戻せる場合あり)
  • 手続きをせずに出国すると、各社の判断で強制売却されることがある
  • 会社によって対応が違う。たとえば三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム)は厳しめで、特定口座や累投型の投信は出国前売却が必要とされる(三菱UFJ eスマート証券 出国・帰国手続き)
  • 出国時に有価証券などを1億円以上持っていると「出国税(国外転出時課税)」の対象になる

要するに「持っていける」けど「育てられない」。数年の駐在の間、積立は完全に止まったまま、というのが現実だ。

「個別株」は持っていける。でも、それは”塩漬け”という意味

ここまで投資信託の話をしてきたけど、「海外赴任 株 塩漬け」で調べてこのページに来た人もいると思う。日本の上場株式(個別株)は、投信と扱いが少し違う。

  • 保有は続けられる:出国手続きをすれば、持っている個別株はそのまま持っていける
  • 売ることはできる:値上がりしたら売却して利益確定はできる
  • でも、買い増しはできない:新規買付が止まるのは投信と同じ。配当の再投資も、ナンピンも、できない
  • 特定口座は一般口座へ:出国にともない特定口座から一般口座へ振り替わる(帰国時に戻せる場合あり)。取得価額は自分で管理しておく
  • 配当は受け取れる:ただし非居住者の配当課税の扱いは口座・居住国で変わるので、各社と税理士に確認しておく

つまり個別株の「保有継続」は、塩漬け——売る自由はあるけど、育てる自由はない、という状態のことだ。

出国前に売るか、塩漬けにするか? 判断の目安

「持っていける」と分かったとき、次に悩むのが「じゃあ、売ってから行くべきか、持ったまま行くべきか」だ。一律の答えはないが、状況ごとの判断の目安をまとめた。

状況判断の目安
含み益がある特定口座のうちに利確するのが税務上シンプル。一般口座移行後は取得単価の自己管理が必要になる
含み損がある損切りして損益通算を使うと、当年の他の利益と相殺できる可能性あり。塩漬けにしても損は消えない
配当目的の長期保有株配当受け取りは継続できる。ただし非居住者の配当課税が変わるため、証券会社と税理士に確認
値動きが大きい銘柄地球の裏側から買い増しもナンピンもできない状態で抱えるのはリスクが高い。売却を検討する価値あり
アメリカ赴任の場合個別株はPFICに当たらないため投信より影響は小さい。ただし米国の確定申告でスケジュールが増える
有価証券の評価額合計が1億円以上出国税(国外転出時課税)の対象になる可能性。出国前に必ず税理士に相談すること

有価証券の評価額合計が1億円以上になる場合は、出国税(国外転出時課税)が課される可能性があるため、出国前に日本の税理士に必ず相談してほしい。1億円未満の一般的な駐在員であれば基本的に対象外だが、NISAと課税口座を合算して1億円近辺にある人は注意が必要だ。

僕自身は、出国のタイミングで持ち物をかなり整理して、できるだけ身軽にして渡米した。理由は単純で、地球の裏側から、買い増しもできない塩漬けポジションを管理し続けるのがしんどいからだ。為替も時差もある中で、塩漬けの日本株を抱えて含み損益に一喜一憂するより、渡米後に使える口座(米国籍ETFやIBKR)で組み直すほうが、自分には合っていた。

もちろん「どうしても持っておきたい優良株がある」なら、塩漬け前提で残すのも一つの判断だ。大事なのは、“持っていける=積み立てを続けられる”ではないと知ったうえで決めること。

アメリカ行きは、もう一段重い(PFIC)

さらにアメリカ駐在の場合は、日本側の証券会社のルールとは別の問題が乗ってくる。米国の税制では、日本の投資信託は「PFIC」という扱いになり、持ち続けるだけで懲罰的に課税されうる。最悪、含み益の半分以上が税金で消える。

だから米国に行く人は、「日本の証券会社が保有を認めてくれる」かどうかに関係なく、税の理由で結局売った方が有利になることが多い。この話は別記事に詳しく書いた → 知らずに10年持っていた投信が、帰国後に税率50%超で課税される話(PFIC)

出国前に済ませておくこと:投信・株の対応チェックリスト

「手続きが必要」と分かっても、「何を、いつまでに」が分からないと動けない。証券会社ごとに締め切りが違うので、以下は目安として使ってほしい。手続きの締め切りが出国日の数日前〜数週間前と幅があるため、出国の1〜2ヶ月前には各社の公式FAQを必ず確認すること。

投資信託の出国前チェックリスト

  • 利用中の証券会社の「非居住者手続き」ページを確認し、締め切り日を把握する
  • 保有中の投信が「継続保有対象」かどうか確認(全ての投信が対象とは限らない)
  • 積立設定の停止日、または証券会社が自動停止する日程を確認
  • NISA口座:会社命令の転勤なら「継続適用届出書」を出国日前日までに提出
  • アメリカ赴任なら:PFICリスクを確認し、出国前売却の方が有利か検討する
  • 特定口座から一般口座に移行されるタイミングと、取得価額の記録方法を確認しておく

個別株の出国前チェックリスト

  • 含み益・含み損のある銘柄を整理し、出国前売却か塩漬けかを判断する
  • 全保有銘柄の取得単価を記録(証券会社のサイトからエクスポートしておく)
  • 配当受け取り方法(証券口座 or 銀行振込)を確認し、出国後も受け取れるか確認
  • 有価証券の評価額合計が1億円以上になる場合は、税理士に相談する
  • 証券会社の「非居住者手続き」期限を確認(手続きなしで出国すると強制売却の対象になることがある)

じゃあ、これから積み立てる人はどうするか

これらを踏まえて、海外の可能性が少しでもある人が今からできることをまとめる。

  • 投信に全振りしない:出国で積立が止まる前提で、ポートフォリオを組む
  • NISAは制度を理解して使う:会社命令の転勤なら最長5年は継続できるが、買い増しはできない
  • 渡米後を見据えるなら米国籍ETF・個別株という選択肢:VTI・VOO・IVVのような米国籍ETFはPFICに当たらない。非居住者でも使えるIBKRという口座もある
  • 証券会社ごとの差を出国前に確認:同じ「投信保有継続」でも会社で条件が違う。手続きの締切も要注意

帰国後のことで言うと、僕自身は今「また海外駐在の可能性があるから、日本の投資信託を積み立てたくない」という気持ちがある。PFIC問題を実体験したことで、「積み立て→出国のたびに売却・再構築」を繰り返すコストが見えてしまったからだ。同じ理由で悩んでいる人には、口座を2〜3社に増やさない・日本での長期投資を個別株や国内ETFベースで考える、という選択肢も現実的だと思う。

「海外なんてまだ分からない」という段階でも、知っておくだけで商品や口座の選び方が変わる。これは始める前にしか打てない手だ。

まとめ

「海外赴任で投信は強制売却」は、僕の時代は本当だった。でも2024〜2025年でルールが変わり、今は手続きをすれば持ったままにできる。ただし積み立ては止まるし、アメリカ行きならPFICで持ち続けるのも不利。だから結論は変わらない——海外の可能性があるなら、投信の積み立ては「出国時の扱い」込みで考えておいた方がいい。

個別株も同じだ。「保有継続できる」の実態は塩漬け——買い増しも再投資もできないまま数年が過ぎる。含み益があれば特定口座のうちに利確する、含み損があれば損益通算を使う、というのが一般的な判断軸になる。有価証券の評価額合計が1億円以上なら出国税の論点が加わるので、必ず税理士に相談してほしい。

当時の僕は、NISAで積み立てていた投信を全部売ることになって焦った。でも今思えば、その強制利確が米国株再構築の原資になった。出国前の整理を「仕切り直しの機会」と捉えられると、渡航後はスッキリした状態でスタートできる

今は選べる時代になった分、選び方を最初から知っておくのが、これから渡航する人の強みになる。


※各社の対応は変更されることがあり、公式FAQに更新日が明記されていない場合もあります。最新の条件は必ず各証券会社の公式ページで、税務は日米両対応の税理士・CPAで確認してください。これは一駐在員の体験と、執筆時点の公開情報に基づく整理です。

よくある質問

Q. 海外赴任したら、日本の投資信託は必ず売らないといけない?

昔は主要ネット証券で「投信は売却必須」が標準でしたが、2024〜2025年に各社が対応を拡大し、今は出国手続きをすれば保有継続できる場合が多いです(売却のみ・新規買付不可)。ただし会社により条件が違うので、出国前に各社の公式FAQで確認してください。

Q. 持ったままにできるなら、積み立ても続けられる?

いいえ。保有はできても新規買付(積み立て)はできません。出国中は積立設定が止まります。「持っていけるが育てられない」状態です。

Q. 個別株(日本株)は海外赴任中も持っていける?

保有は継続できますが、新規買付ができないため”塩漬け”になります(売却は可能)。出国にともない特定口座は一般口座へ振り替わります。配当課税の扱いは口座・居住国で変わるので、各社と税理士に確認してください。

Q. 含み益のある株は、出国前に売った方がいい?

一般的には、特定口座のうちに利確した方が取得単価の管理が楽で、税務上もシンプルになります。一方で「長期で持ちたい銘柄」であれば塩漬けにする判断もあります。有価証券の評価額合計が1億円以上の場合は出国税の対象になる可能性があるため、必ず税理士に相談してください。

Q. アメリカ駐在でも持ち続けていい?

日本の証券会社が保有を認めても、米国税制では日本の投信は「PFIC」として懲罰的に課税されうるため、税の面では出国前に売った方が有利なことが多いです。詳しくはPFICの記事を参照し、日米両対応の税理士・CPAに確認してください。

Q. 出国手続きをしないまま渡航するとどうなる?

証券会社に非居住者として把握された場合、各社の規約に従い強制売却される可能性があります。手続きの有無にかかわらず、出国前には必ず利用中の証券会社に連絡し、対応を確認してください。

免責

この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。

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『駐在のお金、全部やってみた』

このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。