駐在員の米国証券口座はIBKR
駐在が決まって、最初に焦ったのがお金の置き場所だった。
ちょうど1ドルが160円に近づいていた頃。給料の一部はドルで入ってくるとはいえ、日本に置いてある円をどうするかで悩んだ。正直、「この円安のタイミングで全部ドルに変えるのか……」という気持ちが強かった。ドル転すれば、もし円高に戻ったときに目減りする。かといって日本の証券口座は、出国して非居住者になると新規の取引が止まってしまう。
結論から言うと、僕はIBKR(Interactive Brokers)に口座を作った。決め手は「円をドルに変えなくても、円のまま投資を続けられる」こと。今日はその話を、いいところも含み損も正直に書いてみる。
日本の証券口座は、出国すると「塩漬け」になりがち
まず知っておいてほしいのが、楽天証券やSBI証券は海外転出=非居住者になると、新規の株式買付や投信積立が原則止まるということ。保有しているものをそのまま持ち続けるのは可能でも、買い増しはできなくなるケースが多い(細かい条件は証券会社ごとに違うので、自分の口座で確認してほしい)。
僕の感覚だと、ここを知らずに出国して「いざ買おうとしたら弾かれた」という人が、周りにそこそこいる。マネックスは比較的柔軟という話も聞くけれど、いずれにせよ、出国前に自分の口座がどうなるかは確認しておいたほうがいい。
その点、IBKRは非居住者・海外在住を前提にした証券会社なので、駐在員でも普通に使える。ここが入口として大きかった。
僕がIBKRを推す3つの理由
① 為替コストがほぼゼロに近い
IBKRの両替コストはとにかく安い。手数料は1回あたり最低2ドル(約300円)。銀行の「1ドルあたり1円」の世界と比べると、桁が二つ違う。
比較として、ネット証券の片道25銭=0.25%だと、1万ドルで25,000円相当。桁が違う。最低2ドルがあるので少額をちまちま替えると割高になるけれど、まとめて替えるほど効いてくる。大口になればなるほどIBKRが有利だ。
② 出金は月1回まで無料
米国の生活費に充てたり、米国の銀行に動かしたりするとき、出金が月1回まで無料なのは地味に効く。2回目以降は手数料がかかるので、僕は「動かすときはまとめて」を意識している。
③ 円のまま投資できる=日米送金のハブになる
これが一番大きい。IBKRは円を入れたまま、円建てで東証の株を買える。つまりドル転を強制されない。「今は円高方向に戻るかもしれないからドルにしたくない」というときに、円のまま日本株で運用できる選択肢があるのは、精神的にも楽だった。
実際に僕がやったのは、円のままIBKRに資金を移して、高配当で知られるソフトバンク(9434)を円建てで買うこと。配当利回りの高さ(数字は時期で変わるので最新を確認してほしい)と、通信大手という安心感で選んだ。
正直に書くと、今のところ含み損で −1.6%。買ったタイミングが良かったわけではない。ただ高配当株なので、配当を受け取りながら様子を見ているところ。これは「うまくいった自慢」ではなく、「こういう実績です」という記録として残しておく。
注意点も正直に——入金時の送金手数料はかかる
いいことばかりではない。日本の銀行からIBKRに入金するときは、日本側の海外送金手数料がかかる。三菱UFJ・みずほ・三井住友あたりで、数千円かかる(金額は銀行ごとに違うので最新の料率を確認してほしい)。
ポイントは、これが送金額に関係なく、ほぼ固定額だということ。だから少額を何度も送ると、この固定費がボディブローのように効いてくる。
僕の体感での損益分岐は、こんなイメージだ。
- 100万円くらいの送金なら、他社と比べて劇的な差は出ない
- 500万円を超えてくると、IBKRの為替コストの低さが支配的になって圧勝する
つまり「とりあえず少額で試す」段階だと旨味は薄く、ある程度まとまった額を動かす人ほど恩恵が大きい、という性格の口座だと思う。ここは自分の金額感と相談したほうがいい。
「送金ハブ」として持つなら、実態のある使い方を
IBKRは日本円を入れて、円のまま持つ・ドルに替える・米国に出金する、という日米のお金の通り道(ハブ)として、かなり優秀だ。
ただ、ひとつ僕なりに気をつけているのは、「送金専用」みたいな使い方にしないこと。あくまで証券口座なので、実態のある使い方をしておくのが自然で安心だと考えている。
僕の場合は、1万ドルくらいをVOO(米国の代表的なインデックスETF)などで運用しながら口座を維持している。投資もしているし送金にも使う、という普通の証券口座の姿にしておけば、変に身構える必要もない。これは「送金だけだと閉じられる」と脅したいわけではなくて、せっかく開けた口座なら、運用しながら持っておくほうが気持ちよく使えるよ、という提案だ。
まとめ
僕がIBKRを選んだ理由を整理すると、こうなる。
- 非居住者でも普通に使える(日本のネット証券は出国で新規取引が止まりがち)
- 為替コストが極端に安く、まとまった額ほど効く
- 円のまま投資でき、ドル転を強制されない
- 日米送金のハブとして実用的
一方で、入金時の海外送金手数料は固定でかかるし、少額だと旨味は薄い。含み損だって普通に出る(僕のソフトバンクは今−1.6%)。万能ではない。
それでも「円安局面で全部ドルに替えたくない」「出国後も投資を続けたい」という駐在員の悩みに、IBKRはかなり噛み合う選択肢だと思う。
最後にひとつだけ。ここに書いたのは、あくまで僕個人のケース。手数料や各社のルール、税務の扱い(日本・米国どちらで申告するかなど)は人によって変わるし、制度も変わる。実際に動かす前には最新の公式情報を確認して、税金まわりは税理士など専門家に相談してから判断してほしい。
関連ツール:自分の数字で試せる計算ツールを用意しています → 海外送金コスト比較ツール。
よくある質問
Q. 駐在員はどの証券口座がいい?
楽天・SBIは出国(非居住者)で新規取引が止まりがちです。僕は非居住者前提のIBKRを選びました。各社の最新条件は必ず確認してください。
Q. IBKRの何が安い?
両替コストが最低$2と極めて低い点です。為替スプレッドが主コストになる送金で、これを回避できるのが大きい。大口ほど有利になります。
Q. デメリットは?
日本からの入金に海外送金手数料が固定でかかるので、少額だと旨味は薄いです。含み損も普通に出ます(僕の保有銘柄も現状マイナスのものがあります)。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。