「会社任せ」で済んでいたのは、どこまでか
まず線引きをはっきりさせたい。僕の場合、会社が税理士を雇ってくれていて、毎年の米国確定申告は質問書に答えるだけで終わっていた。給与も日米で分割される形になっていて、日本側の住民税も給与から天引きされていた——と思う。正直、ここは会社任せでよく分かっていない。
問題は、この傘がカバーするのが駐在期間中の申告までだということ。帰国のタイミング調整、出国手続き、帰国年の特殊な申告、米国資産の整理にかかる税金。このあたりは会社の税理士が面倒を見てくれない場合が多い。つまり帰国というのは、これまで会社に任せていた部分が急に自分の手に戻ってくる瞬間なのだ。
日本側①:帰国のタイミングと住民税
日本の住民税は、その年の1月1日時点で住民票がどこにあるかで決まる(一般情報)。
これがなぜ帰国と関係するのか。帰国して住民票を戻した日が1月1日にかかっていると、翌年度の住民税(前年所得分)が課税される。逆に1月2日以降に戻せば、その年の課税はかからない、という考え方になる。だから12月帰国の人は、タイミング次第で扱いが変わってくる場合がある。
ただ、「だから誰でも年明けまで遅らせるべき」という単純な話ではない。子供の学校、住む家、会社の都合。帰国日は税金だけで決められない。(要確認:自分の所得状況・帰国時期での具体的な有利不利は、日本の税理士へ)
僕自身、出国時の住民税がどう処理されたかすら把握していなかった人間だ。だからこそ帰国時は、「いつ住民票を戻すと、どう課税されるのか」だけは事前に押さえておこうと思っている。
日本側②:居住者に戻った瞬間から「全世界所得課税」
もうひとつ大事なのが、日本の居住者に戻った瞬間から、全世界の所得が日本の課税対象になるということ(一般情報)。
言葉を先に定義しておく。全世界所得課税とは、日本国内で稼いだ分だけでなく、米国に置いた投資の利益や、将来受け取る退職金口座(401(k))のお金まで、日本の課税対象に含まれるという考え方だ。住民票を戻した日以降に発生する米国の収益が、これに該当してくる。
帰国した年は、出国〜帰国の期間の扱いによって「準確定申告」のような特殊な申告が必要になるケースもあるとされる(要確認:自分のケースで必要かは税理士へ)。駐在中ずっと会社任せだった僕にとって、まさに「これから把握する」領域だ。
米国側①:帰国した年は「Dual Status」になる
米国側で一番ややこしいのが、帰国した年の申告だ。
Dual Status(デュアル・ステータス)とは、ひとつの年の中で「前半は米国の居住者、後半は非居住者」と扱われる状態のこと(一般情報)。駐在で米国居住者とみなされていた人が年の途中で帰国すると、この扱いになるとされる。専用の申告書や付属書類が必要で、ここを誤ると全世界所得に課税されてしまう可能性もあるという。
ここまで来ると、質問書に記入するだけで終わっていた今までとは別物だ。会社の税理士が帰国年の申告まで見てくれるのか、自分で手配するのか。早めに確認しておきたい。
米国側②:出国前の「Sailing Permit」と申告期限
意外と知られていないのが、米国を出国する外国人は原則として出国前に「Sailing Permit(出国許可証)」を取得する義務があるとされること(一般情報。Form 2063 または Form 1040-C を使う)。例外規定もあるようだが、会社の税理士が対応していない場合は自分で確認が要る(要確認:自分が対象か・例外に当たるかは税理士へ)。
申告期限も整理しておく。2025年分(2026年申告)なら、支払期限は2026年4月15日、在外者の自動延長で申告は6月15日まで、Form 4868でさらに10月15日まで延長できるとされる。ただし延長されるのは申告であって、支払いは4月15日が期限。遅れると利子が発生する(一般情報)。
この期限管理も、これまでは「質問書に答えれば後はよろしく」だった。帰国年は自分でカレンダーを意識することになる。
米国資産の整理:401(k)はどうなるのか
帰国後の僕の基本方針は、米国に貯めた資産を取り崩しながら、米国のクレジットカードで生活すること。為替を見て日本円払いも併用するつもりだ。ただ、その「取り崩す」過程で税金がどうかかるのかは、まだ自分の中で整理しきれていない。
調べた範囲での一般的な論点はこうだ。
- 帰国後すぐに金融機関へ W-8BEN(自分が日本居住の非居住者であることを伝える書類)を提出すると、日米租税条約の適用で米国側の源泉税がゼロになるケースがあるとされる(一般情報)。
- 日本側では、401(k)を年金形式で受け取るか一時金で受け取るかで課税の扱いが変わる可能性がある(要確認:日本の最新の税務解釈は税理士へ)。受け取り日の為替で円換算する点も、円安局面では効いてきそうだ。
- 運用会社によっては、日本の住所に変更すると口座の取引に制限がかかる場合があるという。帰国前にロールオーバー等を検討する専門家もいる(要確認)。
円安が給与に効くのは身をもって実感している。今年は3万円ほど昇給したのに、ドル建ての手取りは月$300くらい減った。資産を取り崩すときも、この為替の効き方は無視できないだろうなと思っている。
該当する人だけ:米国の「Exit Tax(出国税)」
最後に、僕のようなビザ駐在(E/H/Lなど)には基本的に該当しない可能性が高い話だが、グリーンカード保有者の読者のために触れておく。
Exit Tax(出国税)とは、ざっくり言うと「米国を去るときに、保有資産を時価で売ったものとみなして課税する」制度だ(一般情報。これは米国側の制度で、日本側の国外転出時課税制度(国税庁)とは別物)。過去15年のうち8年以上グリーンカードを保有していた人が「Covered Expatriate(対象出国者)」に該当すると、これがかかる可能性があるとされる。なお出国前の投信整理(PFICの話)と合わせて、税の論点は入口と出口の両方にある。
該当判定の目安は、①過去5年の平均年間所得税額が一定額を超える、②純資産が約200万ドル以上、③過去5年の申告義務違反がある、のいずれか(一般情報。基準額は年によって変わるので要確認)。該当する場合はForm 8854の提出が必要になるという。
繰り返すが、一般的なビザ駐在なら通常は対象外とされる。ただGCを長く持っている人は、ここだけは必ず専門家に確認してほしい。
なぜ「日米両対応の税理士」なのか
ここまで読んで分かる通り、帰国の税金は日本側と米国側がセットで絡む。
日本国内の税理士だけでは、米国のDual StatusやForm 1040-C、Exit Taxへの対応が難しい。逆に米国のCPAだけでは、日本の住民税や準確定申告に手が届かない。だから、両国のライセンスを持つか、日米で連携している事務所に相談するのが安全、というのが僕の理解だ。
会社の税理士がどこまで見てくれるのかをまず確認して、カバーされない部分を両対応の専門家に任せる。この役割分担を帰国前に決めておくのが、たぶん一番現実的なやり方だと思う。
ここまで書いてきて、改めて思う。駐在中ずっと「質問書に記入するだけ」で済んでいたのは、ありがたいことだったんだな、と。その傘がなくなる帰国を前に、僕は今こうやって論点を並べて、自分の無知を一個ずつ潰している最中だ。
完璧に理解してから書くんじゃない。「まだ分かっていない」段階のメモを、そのまま残しておく。手続きが実際に進んだら、このページに「実際はこうだった」を追記していくつもりだ。同じく出口を控えている駐在の誰かが、僕より少しだけ準備よく動けるように。
よくある質問
Q. 駐在の確定申告は自分でやる?
多くの会社は税理士を手配してくれます。僕も質問書に記入して提出するだけでした。まず会社の制度を確認しましょう。
Q. 帰国時に気をつける税金は?
出国・帰国のタイミングの扱いや、米国資産の整理にかかる税金などです。複雑なので日米両対応の専門家に相談すべきです。
Q. FBARって何?
米国外の金融口座の残高合計が基準額を超えると必要になる報告です。駐在員は該当しやすいので要確認です。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。