アメリカ駐在での車の買い方:新車・リース・中古をどう選ぶか
アメリカ駐在で、僕が最初にやらかしかけたのは「車」だった。赴任直後の2週間、足がない生活を完全にナメていた。そしてローンを組もうとした瞬間、もうひとつの壁にぶつかる——金利がとんでもなく高い。どちらも、知ってさえいれば防げた損失だ。
住む場所や子どもの学校で頭がいっぱいのとき、車はつい後回しになる。でも、はっきり言っておく。アメリカは車がないと生活が始まらない。スーパーも、病院も、子どもの送り迎えも、全部車がいる。ニューヨークやシカゴの一部を除けば、大人ひとりに1台が当たり前の世界だ。うちも結局、自分用と家族用で2台を赴任と同時に用意した。
今日はこの2つの落とし穴を中心に、新車・リース・中古の選び方を実体験ベースで話したい。「アメリカ 駐在 車」で来た人が知りたいことは、だいたい全部書いたつもりだ。
まず立ちはだかる「クレジットヒストリーがゼロ」問題
これが最大の落とし穴だった。アメリカではローンもリースも、信用スコア(クレジットヒストリー)で条件が決まる。ところが赴任直後の僕らは、このスコアがゼロ。「実績のない人間」として扱われるので、普通にローンを組もうとすると金利が跳ね上がる。
しかもローンとリースにはSSN(ソーシャルセキュリティナンバー)が要る。申請して手元に届くまで、入国後の待機期間を含めるとざっと1ヶ月かかる。つまり「着いてすぐローンで新車」は、そもそも物理的に無理なケースが多い。
僕自身、SSNを取ってからANA USAカードでクレヒスを貯め始めたが、スコアが700を超えるまで8ヶ月かかった。この間はローンの土俵にすら上がれないと思っておいたほうがいい。だから「着任してから信用スコアを育てて、それからローンで車を」という順番は、駐在の現実には合わない。
ディーラーもこちらの足元を見てくる。スコアのない外国人だと、中古車を新車並みの値段で出してくることもある。実際、僕の同僚は「クレジットがないから」と言われ、相場よりかなり高い見積もりを掴まされかけた。ここは本当に注意してほしい。
クレジットヒストリーがなくても車は買えるのか
結論、買える。ただしローンやリースを組むのは難しいので、現金一括が基本線になる。僕も2台とも現金で買った。クレヒスゼロで無理にローンを組んで高金利を払うより、そのぶんの現金を先に用意しておくほうが、トータルでは安く済む。
だから駐在の車の話は、金利をどう下げるかより「いくら現金を用意しておくか」の話になりやすい。うちの場合、車2台で約$40,000(当時のレートで約600万円)が最初にドンと出ていった。正直、渡米前は300〜400万円くらいで足りると思っていたので、想定の1.5〜2倍だ。この費用を日本から送金する必要もあって、そこで送金手数料でも別の失敗をしている(その話は立ち上げ費用の記事にまとめた)。
もうひとつ、駐在ならではの補助にも触れておく。会社によっては、車の購入に対してリース相当の月額補助が後から出るところもある。うちがそうだった。ただしこれは「最初に一括で払って、あとから毎月少しずつ戻ってくる」形なので、渡米直後にまとまった現金が要る構造は変わらない。補助があるからといって手元の現金を薄くすると、着任早々にキャッシュが詰まる。ここは会社の制度を先に確認しておきたい。
新車・リース・中古、どれを選ぶか
結論から言うと、駐在期間で決めるのがいちばんシンプルだ。
新車は、2024年時点で平均価格が約$47,870(約700万円)。カムリでも諸費用込みで$40,000前後する。問題は値落ちだ。買って1〜2年での下落幅が大きく、3年未満の駐在だと帰国時の売却で大きく損をする。長く乗る前提か、どうしても新車がいい人向けだ。
リースは駐在員と相性がいいと言われる。契約期間が24〜36ヶ月で区切られ、3年契約が標準。帰国時は返すだけで、売却の手間がない。新規リースの平均月額は$595前後。コンパクトSUVのCR-Vクラスなら、月$500あたりが目安だ。ただし前述のとおり、リースも信用スコアで審査されるので、クレヒスゼロの着任直後にいきなり組むのは難しい。組めても条件が悪くなりがちだ。
そしてリースには注意点が2つある。ひとつは、フルカバーの保険加入がほぼ必須で保険料がかさむこと。もうひとつは、年間1万2千マイル(約2万km)の走行距離制限があり、超えると追加料金を取られること。途中帰国時の違約金も契約次第なので、ここは必ず確認したほうがいい。
中古車は、3年以内の駐在ならコスパ最強だと思っている。アメリカは10万マイル超えでも普通に流通していて、ある程度走った車は値落ちが緩やか。だから「中古を現金一括で買って、帰国時に売る」が、金額的にはいちばん合理的になりやすい。僕も結局、2台とも中古の現金一括にした。
そして実はいちばん多いのが、前任駐在員から直接引き継ぐパターン。手続きが楽で価格交渉もしやすく、相手も帰国前に売りたいからWin-Winになりやすい。これは駐在特有の選択肢で、日本人向けの中古市場よりずっと有利な条件が出やすい。詳しくは後述する。
どのメーカーを選ぶか——4年乗って出た答え
車種選びは、駐在だからこその視点がある。帰国時に売ることまで含めて考えるという視点だ。
僕は中古で2台、1台はトヨタ、もう1台はシボレー(アメ車)を買った。4年乗った結論を言うと、日本車、特にトヨタを選んだほうがいい。
トヨタは4年間、大きな故障もなく順調だった。一方のシボレーは何度かトラブルがあって、一度エンジンの修理で**$5,000がまるまる自腹**になった。保険は効かない、機械的な故障だ。これが効いた。
しかもトヨタやホンダは、アメリカの中古市場でリセールバリューが全ブランドで最上位クラス。つまり駐在員には二重に得なんだ。乗っている間は故障が少なく修理代がかからない。そのうえ帰国時に売るとき高く売れる。買値が安いアメ車も、修理代とリセールの安さで結局は高くつく——これが4年乗った実感だ。
正直に書くと、僕にも「アメリカに来たんだからアメ車に乗りたい」という気持ちはあった。本当はジープのラングラーに乗りたい。ピックアップトラックへの憧れもわかる。でもそこは、修理代とリセールを覚悟したうえでの選択になる。合理でいくならトヨタ、夢を取るならコストは覚悟の上で。そこは個人の好みだと思う。
カーローンの金利と保険——現実的にいくらかかるか
クレヒスがあってローンを組める人向けに、金利の相場も書いておく。信用スコアが十分に高ければ新車ローンで年6〜7%前後、中古だともう少し高い、というのが近年の水準だ。ところがスコアがゼロ・低い状態だと、これが二桁%まで跳ね上がることがある。数万ドルの買い物でこの金利差は大きい。だからこそ、着任直後は現金一択になりやすい。
保険も忘れてはいけない固定費だ。州や年齢・運転歴で幅は大きいが、駐在員はアメリカでの運転歴がゼロ扱いになるため、当初は保険料も高めに出やすい。日本の無事故証明(等級を証明する書類)を出せば割引になる保険会社もあるので、渡米前に取り寄せておくと効く。リースの場合はフルカバーが必須で、ここがさらに乗る点も先に触れたとおりだ。
前任者から車を引き継ぐという「駐在の裏ワザ」
これは駐在にしかない選択肢なので、独立して書いておく。
前任者や、先に来ている駐在員から中古で車を買う。これが手続き・価格・信頼性のすべてでいちばん楽になりやすい。理由はシンプルで、相手は帰国前にどうせ売りたい、こちらはすぐ足が欲しい、利害が完全に一致するからだ。ディーラーのように足元を見てこないし、その車がどう使われてきたかも直接聞ける。
駐在コミュニティでは、車も家具家電も「帰る人から来る人へ」回していくのが定番だ。うちも家具家電はほとんど中古で揃えて、かなり節約できた。会社の駐在員会や、現地の日本人コミュニティに早めに顔を出しておくと、こういう譲渡の話は自然に回ってくる。
「車がない期間」をどう乗り切るか
ここが意外と語られない。対処は3つある。
1つ目、空港からはレンタカーが正解。荷物が山ほどある中でUberを呼ぶより、その場で借りて走り出すほうが圧倒的に楽だ。最初の数週間〜1ヶ月をレンタカーでつなぐ人は多い。
2つ目、Uber/Lyftは過信しない。都市部ならいいが、郊外の住宅地だと待ち時間が長く、深夜はそもそも捕まらない。「Uberで暮らせる」は、車社会のエリアでは危険な思い込みだ。
3つ目、これが最善手。前任者と事前に連絡を取り、到着日に車を受け渡す。これができれば車なし期間をゼロにできる。駐在コミュニティでは定番の手だ。
まとめ
車選びの結論はシンプルだ。3年以内なら中古の現金一括か前任者からの引き継ぎ。期間が長め・新車志向でクレヒスが育っていればリース。メーカーは、帰国時の売却まで考えるとトヨタなどの日本車が堅い。クレジットヒストリーとSSNの壁を忘れず、着任直後はローンより現金を厚めに用意して、最初の空白期間はレンタカーで埋める。
クレジットヒストリー不要で、赴任当日から手配してくれる日本語対応のサービス(IASやGulliverなど)もある。忙しくて自分で動けない人は、選択肢に入れていい。
車は赴任生活のインフラそのものだ。ここを最初にうまく押さえられると、その後の数年がぐっと楽になる。これから渡米する人の参考になればうれしい。
車を含めた着任直後の必要現金を概算したい人は、こちらも → 駐在 立ち上げ費用シミュレーター。
よくある質問
Q. 駐在直後に車は買える?
買えます。ただしクレヒスがゼロだとローン金利が跳ね上がるため、現金一括が基本線になります。うちは車2台で約$40,000を最初に用意しました。
Q. 新車・リース・中古どれがいい?
状況次第です。3年以内の駐在なら中古の現金一括が金額的に合理的で、僕もそうしました。長め・新車志向でクレヒスが育っていればリースも選択肢になります。
Q. いちばん賢い買い方は?
前任者からの引き継ぎが、手続き・コスト・信頼性の面で最善手になりやすい、というのが僕の結論です。
この記事は一人の駐在員の実体験の記録であり、投資・税務・法律の助言ではありません。 投資は自己責任で、税務は必ず専門家にご相談ください。制度・手数料は執筆時点の情報です。 詳しくは免責事項へ。
BOOK
『駐在のお金、全部やってみた』
このブログの4年分の記録を、出国前→着任→駐在中→帰国の時間軸で1冊に再構成しました。 失敗の実額と実ポートフォリオまで、全部載せています。